佐藤芳嗣法律事務所

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シニアの離婚  ー離婚はよく考えてからー

結婚について

結婚は、法的には、原則として男女間でする、「一生を相手と共に生きる」「契約(合意)」です。結婚には期限を定めることができず、結婚は一方が死ぬまで続ける契約です。普通の契約には期限や様々な条件を付けることができます。しかし、結婚は全人格的・包括的な契約であって様々な条件を付けることは原則としてできません。したがって、1年間だけ結婚する契約は認められませんし、複数の異性と結婚することもできません(一夫多妻制度の国もありますが、多くの国は一夫一婦制度です)。
個人の尊厳が認められている日本国憲法の下では、結婚は両性の合意のみにより成立します。したがって日本では誰と結婚するかは全く自由です。しかし、一旦結婚すると全人格的・包括的な契約をした制約を受けます。夫婦には同居の義務、相互扶助の義務、婚姻費用分担の義務、子どもをもうけた場合は協力して子どもを養育し教育する義務などがあります。不貞行為が離婚原因のひとつとされていますから男女を問わず貞操義務もあります。
結婚した二人が一生相思相愛関係を維持し人生を全うできるならばそれは望ましいことであり幸せな結婚と言えます。しかし、結婚するすべての夫婦がそのような幸福な関係を築くことができるわけではありません。一生を共にすることを固く誓ったとしても様々な理由から夫婦関係が破綻することはあり得ます。夫婦関係が破綻したときどのように夫婦関係を解消し2人の関係を清算するか、それを法的に定めているのが離婚制度です。

日本の離婚制度

離婚制度にもいろいろあります。宗教的にあるいは法的に離婚を一切認めない国もあります。しかし、多くの国は離婚を制度として認めています。しかし、どのようなときに離婚できるかは国によって異なります。日本の離婚制度は、夫と妻の協議により離婚の合意ができさえすれば自由に離婚できます。これを協議離婚といいます。この場合離婚の理由は一切問いません。これほど離婚の自由を認めてよいのだろうかという疑問もあります。例えば、夫婦の間に高校生や大学生の子どもがいる場合でも、現行法ではその子の意見を聞かなくとも夫婦の合意だけで自由に離婚ができます。子どもは父母の離婚により大きな影響を受けるにもかかわらず子どもには父母の離婚に意見をいう機会さえ与えられていません。子どもの権利条約は子どもの意見表明権を規定していますのでその精神からすると現行の離婚制度に問題がないとは言い切れません。
この点はさておくとして、協議離婚も夫婦の合意がなければできません。一方が離婚に反対すると今度は一転して離婚の自由は大きく制約されます。民法上は相手方に不貞行為などの離婚原因がないと離婚はできないのです。もっとも、判例では、夫婦関係が破綻した場合、一方が離婚に強く反対したとしても離婚を認める傾向が次第に強くなってきています。破綻した夫婦の離婚を法的に制限したところで良好な夫婦関係に戻るわけではなく、破綻し形骸化した夫婦関係を法的に保護する意味がないと考えられるようになってきたのです。このような破綻した夫婦関係は法的保護に値しないとの考え方は今や世界的な傾向です。したがって、現在では結婚はそれだけでは夫あるいは妻の法的地位を無条件に保護する制度ではなくなっています。夫婦の信頼関係がなくなり事実として夫婦関係が破綻したならば仮にその破綻に責任がないとしても離婚を覚悟せざるを得ないのです。このような大きな流れの下では、夫にしろ妻にしろ経済的にも精神的にも自立が求められます。生涯固い絆で結びついている夫婦ならともかく、多くの夫婦にとって結婚は今や生涯を保障する制度ではないという厳しい現実があるのです。

離婚と財産分与

夫婦関係が破綻して離婚のやむなきに至ったならば、夫婦が「結婚後協力して形成した全財産」は原則として半分に分割して分けます。これが離婚に伴う財産分与です。これは専業主婦の場合でも同じです。例えば夫の給料で形成された夫名義の預金でも離婚するならば半分に分けるのです。妻の家事や育児も夫の稼ぎと同じ評価をするのです。
これまでは将来受給する年金について遺産分割の対象になるかどうかはっきっりしませんでした。しかし、法改正があり今後は所定の手続きを取ると将来夫が受給する年金も離婚に際し分与できることになりました。このため、この制度がはじまるまで離婚を控えていた妻が相当数存在するといわれています。しかし、夫が受け取る年金の2分の1を必ず分けて貰えるわけではなく2分の1は最大でありそれより少ないケースの方が実際には多いと思われます(現在の実務では2分の1がむしろ原則の運用となっています)。また、離婚をすると夫が死亡しても遺族年金の受給権(2分の1より多い)がないので年金を分割しても必ずしも利益にならないとも言われています。そもそも、夫婦が同居し二人で暮らしても年金だけでは生活できない年金額なのに、その少額の年金を分割して2所帯にして生活できるはずがないとも思われます。したがって、年金の分割目当てに離婚することは必ずしも賢い選択とは限りません。
多額の住宅ローンが残っている夫婦の財産分与は難問です。住宅ローンを借りるときは離婚のことは考えておりません。夫婦が協力して初めて住宅ローンの返済が続けられ自宅を維持できることが多いのです。離婚する際に自宅を売って住宅ローンの返済をしようとしても多くの場合住宅の価格は大幅に下落しており多額の住宅ローンが残ります。この場合、財産を分与するどころか離婚に際して多額の負債をお互いに引き受けることになりかねないのです。
財産が何もない夫婦の離婚でも、一方が離婚により生活ができない場合、他方に扶養的財産分与を請求できる場合があります。財産分与には清算的要素の他に扶養的要素も認められているのです。ですから離婚時に分割する財産がないから相手に一切財産分与しなくてよいと考えるのは早計です。

離婚に伴う慰謝料

夫婦が破綻し信頼関係の回復が不可能な場合、破綻した原因を作った配偶者は他方に対して慰謝料を支払わなければなりません。不貞行為や家庭内暴力(DV。ドメスティック・バイオレンス)などがあると他方に対して慰謝料を支払わなければなりません。その額は不貞行為やDVの内容、結婚期間などを総合して決めます。しかし、私に言わせると日本の裁判所が認める慰謝料の額は必ずしも高額ではなく、数百万円のケースがほとんどであり、離婚後の生活が保障されるほどの額では決してありません。
不貞行為がありそれが原因で離婚する場合不貞行為の相手方に慰謝料請求できるかという問題があります。この点について学説では様々な議論がありますが、日本の裁判所は不貞行為の相手方に対する慰謝料請求を認めています。しかし不貞行為の主たる責任は通常配偶者にあると考えられるので、配偶者に対する慰謝料よりその額は少なくなる事例が多いと考えられます。

高齢者の離婚について

結婚後数十年して離婚しようとするからにはその方にはそれなりの事情があると思われます。子どものために耐えに耐えてきた人生であったとか、あまりに激しい暴力があり怖くて離婚を言い出せなかったとか、離婚後の生活のことを考えると離婚に踏み切れなかったとか、信頼していた配偶者が浮気していたことが最近分かったとか事情は様々です。ですから一概に高齢者の離婚を否定することはできません。しかし、法律家から見ると、一時の感情に囚われ後先を考えず離婚に踏み切ることは必ずしも賢くありません。結婚が人生を保障するものではないように離婚もまたその後の人生を保障するものでもないのです。多額の慰謝料や財産分与を相手から勝ち取って離婚しようとしても現実は厳しいのです。離婚後、精神的にも経済的にも自立できる人でないと離婚も自由にできないのが実情です。ひとりで生きる自信がある人や離婚に伴う様々なハンデイーにもかかわらず、ひとりで生きた方が現在よりマシだと考える人は離婚も選択肢です。しかし、迷っているうちは離婚しない方がよいのです。離婚は最後の手段でありその前にやることがたくさんあるのではないでしょうか。