佐藤芳嗣法律事務所

〒386-0023 長野県上田市中央西1丁目7-2
TEL (0268)27-9349

事務所のご案内

弁護士の現在・過去・未来~地方弁護士の軌跡と今後のあり方

はじめに

私は団塊の世代に属し司法研修所は31期生である。1979年4月に司法研修所を卒業と同時に長野県上田市に法律事務所を 開設した。その後今日まで25年間,長野地方裁判所上田支部,隣接する佐久支部の裁判実務を主な業務とする弁護士活動をしてきた。顧客はほとんどが個人としての一般市民であり,他に,中小企業,市町村,労働組合などが顧客に含まれる。破産管財人,国選弁護など裁判所から依頼される事件も多く受任している。このような地方の小都市を拠点に,弁護士1人,事務員2人ないし3人の法律事務所を維持し,民事,刑事,家事の裁判実務を中心に仕事してきた経験に基づき「地方の小都市における弁護士」の過去・現在・未来を考えたい。

地方の小都市における弁護士業務と諸活動

私の事務所がこれまでどのような仕事をし,どのような公益的活動をしてきたか振り返ると以下の通りまとめることができる。

 

1 背景事実の説明

  1. 裁判や裁判所関連の仕事が中心である。顧問会社あるいは日常的に相談に訪れる様々な団体が15程度あるもののその都度相談に来る一般市民,中小企業が顧客の大多数を占めている。
  2. 長野地方裁判所上田支部と佐久支部管轄下の事件を中心に受任している。そこで,基本的なデータとして以下の諸点を明かにしておきたい(事件数は2001年度。詳細は「長野県の地域司法計画2002年版参照)。
上田支部 佐久支部
管轄下の人口 約30万人 約22万人
地裁の裁判官数 2人 2人
民事通常年間事件数 220件 160件
刑事年間事件数 177件 187件
破産事件数 198件 197件
執行事件数 466件 489件
弁護士数 11名 5名

2 民事事件

過去25年間(1979年4月から2003年3月)で処理した民事事件の総数は1254件である。事件の内容により,多い順に記載すると次のとおりである。
不動産関係(賃貸借・境界含む)224件,破産・任意整理165件,離婚等157件,損害賠償請求152件,貸金・保証関係117件,相続75件,売掛金回収36件,手形・小切手34件,競売・強制執行30件,請負26件,労働事件26件,破産管財人(会社更生,和議,民事再生含む)23件,その他189件であった。どの地域にもある様々な種類の事件を受任してきたが,労働事件を受任していること,破産管財人だけでなく会社更生,和議,民事再生事件も取り扱ってきた点に特色がある。

       

3 刑事事件

過去25年間に弁護人として関与した刑事裁判の被告人数は530人である。被告人数と事件数は一致しないが,罪名で多い順に記載すると次のとおりである。受任事件の80%以上が国選事件,えん罪の可能性があり本格的に無罪を主張した事件が8件ある。

窃盗165件,道路交通法違反91件,出入国管理及び難民認定法違反87件,覚せい剤取締法違反71件,業務上過失致死傷59件,暴行・傷害39件,恐喝20件,詐欺17件,住居侵入13件,文書偽造・同行使11件,横領7件,強制猥褻・強姦6件,殺人5件,強盗・強盗致傷4件,その他8件。

   

4 法律相談

  1. 無料法律相談   

    弁護士会や私の事務所が市町村などと契約し実施している「無料法律相談」が年間20回程度ある。これらの無料法律相談で年間約200件の相談に応じている。

  2. 有料法律相談   

    正確な統計がなく不明であるが,民事関係の受任事件数より多いと推測される。

5 公益的活動

弁護士会の活動を含む公益的活動は以下の通りである。25年間を平均すれば,少なくとも週1日以上,弁護士会の活動を含む公益的活動に従事してきたと思われる。

  1. 弁護士会活動   

    例年4つ程度の各種委員会に所属し様々な委員会活動をしている。会長,副会長職も各1回担当した。3年前から信州大学にロースクールを設置する諸活動に参加し,日弁連,関弁連,十県会の活動に参加することもある。

  2. 公職    

    社会福祉法人の理事,上田市の情報公開審査会委員,長野家庭裁判所委員会委員などの公職に就任している。

  3. 大学の講師   

    1994年から7年間,上田市にある長野大学で週1回「人権と国際社会」の講座を担当した。

  4. 市民運動   

    私の事務所は,1980年から「上田市民大学」の事務局を担っている。上田市民大学は,20世紀初頭に全国に先駆け開校した「上田自由大学」の精神を受け継ぎ,様々な職業の市民が月一回集まり,平和,環境,人権問題などを自主的に学習している「市民大学」である。

当事務所には2014年(平成26年)1月から堀米美聡弁護士が参加、現在、弁護士2名、事務員3名の体制で執務しています。佐藤芳嗣法律事務所が取り扱っている事件は、市民の皆様や中小企業、公共団体、社会福祉法人、大学などの依頼により、一般民事事件、家事事件(離婚・相続など)、交通事故・労働災害、消費者問題(先物取引・詐欺商法など悪徳商法の被害者救済)、医療過誤、消費者問題(クレ・サラ問題、多重債務者の救済など)会社の破産・民事再生、M&Aを含む様々な企業法務、刑事弁護などです。

佐藤芳嗣法律事務所は、上田市、東御市、小諸市、佐久市、千曲市、長野市を含む長野県東信地区の市民、中小企業、地方自治体、大学などの皆様の様々な法的ニーズに適正かつ迅速に対処できる法律事務所を目指しています。

地方都市における弁護士の未来

1 弁護士数の増加

私は,新規法曹を年500人に制限した時代が長く続いた恩恵を受けた世代である。管轄下の人口約50万人に対し,私が開業した1979年当時で7名,25年後の現在でも16名の弁護士しかいなかった。ことの善し悪しは別にしても新規法曹年3000名の時代が目前に迫っている。極めて小規模な地裁支部は例外として,多くの地裁支部で今後弁護士数は着実に増加する。しかし,地裁支部で民事,刑事,家事の通常訴訟,調停事件が飛躍的に増加することは考えにくい。そうすると,地方の小都市において裁判事件に偏った仕事をし,私の世代では可能であった前記のような多額の事務所維持費を費やし,弁護士1人の単独事務所を維持していくことは,一部の弁護士を除いて難しいと予測する。

2 職域の拡大

そこで,職域の拡大に取り組む必要がある。

  1. 企業法務   

    私自身は,普通の市民である個人を主たる顧客とする事務所を経営してきたし,そのことは私の思想,信条,弁護士像に合致することでもあった。しかし,地方の小都市にも中小企業は数多く存在し,弁護士の日常的な法的援助を必要としている。これまで,全体としては地方の弁護士は必ずしも企業法務に熱心であったとは言い難く,企業法務に習熟していないきらいがあった。今後地方の弁護士も企業法務に積極的に進出していかなければ業務としての弁護士業は成立しにくいと考える。

  2. 市町村,社会福祉協議会,学校,その他の公的団体   

    上田・佐久支部管内に25の市町村が存在するが,顧問弁護士がいる市町村はほんのわずかである。市町村も様々な法律問題を抱え弁護士の援助を必要としている。ところが,私が佐久広域連合と契約し市民を対象に月1回開催しているはずの「無料法律相談」に市町村の職員や学校の先生が様々な法律問題の相談に来ている。成年後見制度,高齢者の財産管理など法律制度を有効活用しながら推進すべき社会政策・福祉政策は多い。社会福祉協議会,社会福祉法人,各種のNPOも弁護士の援助を必要としているのである。

  3. 専門性を要する事件への取り組み  

    地方にも大病院から小病院まで様々な病院があり,少なからず医療過誤が発生している。しかし,地方の弁護士の多くは,複雑な医療過誤事件の受任に躊躇している。子どもへの虐待,家庭内暴力,セクシュアル・ハラスメント,先物取引その他の消費者問題,外国人の様々な事件,民事再生事件などは地方でも多い。これらの事件を受任し適正に処理するにはある程度の専門知識が必要である。しかし,小都市の弁護士がこれらの事件に十分対処してきたとは言い難い。

  4. クレサラ・商工ローン,破産事件   

    他の地域と同じく上田・佐久管内でもこの種の事件が多発している。しかし,弁護士不足からこれら事件について弁護士の適切な援助を受けられないでいる市民は少なくない。

   

3 事務所の共同化と専門性の獲得

2004年5月現在,上田・佐久支部管内には共同事務所が1つもない。しかし,私は今後小都市の法律事務所も大きく2つに分かれていくと考える。事務所を共同化しある程度の専門性を獲得して行こうとする事務所と,事務所の経費を削減するなどの合理化を図り単独事務所として生き残ろうとする事務所である。現在,地方の弁護士はどちらを選択するか悩んでいる。事務所の共同化による専門性の獲得と弁護士1人当たりの事務所維持費削減の必要性は感じても,自由で独立した1人事務所の気楽さは捨て難いものがある。また,弁護士が専門性を獲得することにより取り扱う事件が偏り,逆に,一般事件を処理する上で必要な総合的な事件処理能力が低下しないか不安がある。法廷活動を中心とするこれまでの弁護士像からかけ離れ,また,弁護士としての独立性や自由を失う危険性もある。
しかし,事務所の規模や取り扱う事件が異なる多様な法律事務所が地方都市にも必要である。弁護士界全体として収益源の多角化を計り,新たな職域を獲得していかない限り,弁護士の飛躍的な増員に対処できない。
さらに,法科大学院の実務家教員を地元弁護士会から継続的に派遣し,地方でも弁護士任官を推進し,司法修習生やロースクールの学生を多数受け入れるなどして,自分たちで質の高い法律家を養成していかなければならない。

  

4 弁護士会と地域の法科大学院の役割

今後,地方の弁護士もそれなりの専門性を獲得し,その地域の法的需要に十分応えられる力量を身に付け,これまで以上に弁護士の職域を拡大していく必要がある。個々の弁護士が自らの努力で専門性を獲得していくことが基本であるが,その能力には限界がある。そこで,弁護士会やその地域の法科大学院が弁護士の研修や継続教育について重要な役割を果たすことが期待される。